0715-0720

7/15(木)
ベランダの柵に雨が当たる音で目が覚める。5時。仕方なく洗濯物を取り込む。やがて雷鳴とどろき、けっこう不安になる。

矢田部英正「椅子と日本人のからだ」を読む。

椅子と日本人のからだ

何度読もうとしても寝てしまう。腰の可動域の違いを検証する写真が興味深かった。他人がはたから見てよい姿勢を作り出すことは難しい。

8時起床。コーヒーだけ飲んで家を出る。電車のダイヤがやや乱れている。かえって空いている車内で石井桃子「子どもの図書館」を読む。

子どもの図書館 (岩波新書 青版 559)


職場に着くと、今朝の雷であらゆるサーバーにトラブルが発生していた。複合機の修理マンはこの日一日中、わが社にかかりきりだった。

弁当のおかずはれんこんゆかり和え、かぶの酢漬け、ゴーヤとなすと豚バラの味噌炒め。この味噌は「料亭の味」というみそ汁用の液体味噌なのでだしが入っている。みそ汁以外に使うとけっこうわざとらしいだしの味がする。この味噌がわざとらしいというか、だしに主張されるとちょっと引いてしまう料理がある。出汁キーマカレーとか。

午後、すいかが切り分けられる。社員が持ち込んだもの。自分で分配しない奴はお土産、差し入れ一切するな。わたしにそんなことを頼む人間はもういないが、毎回自分のことのように苦々しくしく思っている。デスクに置いてある清め用の塩をかけて食べた。おいしかった。

やがて退勤。図書館へ寄る。ネットで予約して借りたヴァージニアウルフとタブッキに、手に取らずに小説を選ぶと読み切れないことを教えられた。ヴァージニアウルフの文体が表す「意識の流れ」、これは村上龍の「空港にて」で描かれているようなことでは?あれは大好きなのにな。一旦全部返す。

帰宅、風呂。夕飯はキューピーのあえるパスタソース「ツナマヨ」のスパゲッティ。醤油マヨネーズの味なのでどんな野菜を足してもおいしい。ブロッコリーとしいたけを足した。


7/16(金)
9時起床。マヨネーズトーストを食べた。今日は午前休をとって通院。病院着。待合室はワクチン接種しにきた人でいっぱい。2回目の人が多い。

経済的徴兵制をぶっ潰せ!」を読んで待つ。

経済的徴兵制をぶっ潰せ! 戦争と学生 (岩波ブックレット)

利子があるものを奨学金と呼ぶのはおかしい、学生ローンだという指摘。わたしが大学に入学して奨学金を借りる時、金額を親と相談すると「じゃ月5万円借りとこか」とすぐに返ってきた。根拠がなさそう。自分も特に疑問をもたずそのまま申し込みした。働き出してから各種書類を見て、既定の返済額だと何十年も返済し続けなくてはいけないことにゾッとして何回かボーナスを全額突っ込んだりしつつ2年ほどで返済した。これは実家で暮らしていたからできたこと。

わたしの元にはまだワクチンの接種券が届いていないが、そのことによって一旦思考停止できているところがある。必死に予約して、ファイザーは半年経ったら効果が薄れるからもう一度打つ必要があるとか、いや必要ないとかいう議論の経過を追うのはとても疲れることだと思う。大学受験前にインフルエンザワクチンを打ってくれた実家の近所の医者の、「打ってもかかる時はかかりますけどね」という言葉とか、言い方がなんとなくずっと頭にある。「重症化は防げるが熱が出て受験できないことは普通にある」というくらいの意味だったのかもしれないが、本来ワクチンに期待できることには限度があるんじゃないか。

病院おわり。スーパー2へ。午前中のスーパーは商品もたくさんあり、魚もトロ箱から選べるようになっていて活気がある。きゅうりがバラ売りか10本入り?しかなくて見送り。数本だけ袋詰めしたい客が群がって動線がぐちゃぐちゃになっていてイライラした。わたしには動線警察みたいなところがある。ほうれん草、トマト、まいたけ、しめじ、えのきなど買う。

帰宅、野菜の下処理。昼食はなすとツナのスパゲッティ。「ズッキーニとアンチョビのアーリオオーリオ」というレシピを参考にした。ツナにナンプラーを入れるとアンチョビみたいな味がするとMさんが言っていたのを思い出して。ただ、わたし自身アンチョビを久しく食べておらず、味を忘れている。トマト味はおいしいに決まっているので、そうじゃない味にできて満足。

正午、家を出て職場へ。この時間に外を歩くことはまずないが、驚くほど暑い。格安スーパーに寄ってカレー味のぼんち揚げや白だし酢を買う。だしなのか酢なのか、中途半端な味の白だし酢2本目。夏は何かと使えることがわかってきた。やがて退勤。帰宅、風呂。夕飯はせみ餃子、冷ややっこにほうれん草、すりごま、辛ラーメンの粉、ごま油をのせたもの。


7/17(土)
7時ごろ起床。コーヒーをいれて、目玉焼きトーストを食べた。家を出て駅へ。数十人単位の団体がコンコースに数組いてギョッとするが、オリンピックを思うと何のこれしきという感じだ。「やけくそ夏休み」という言葉が頭に浮かんだ。

電車の中でヨジョ「とにかく、トッポッキ」を読む。

とにかく、トッポッキ (K-BOOK PASS 3)

本人による※の注釈が秀逸。邦訳されている著作はこれだけらしいのが残念。挿絵により、トッポッキ屋でサービスされるえびの天ぷらは頭がついたものであることを知る。
ヨジョはベジタリアンらしく、そこで養鶏場や養豚場の惨状について少し触れられている。ちょうどアニマルウェルフェアのブックレットが手元にある。図書館の妖精の仕業だ。

アニマルウェルフェアとは何か――倫理的消費と食の安全 (岩波ブックレット)

自分にどんな影響が出るかわからないのでまだ読んでいない。


12時前、谷町六丁目駅着。スパイス堂へ。道すがらカレー好きのMが「いかにもだね~」とニヤニヤしている。いかにもスパイスカレー屋に続いていそうな、大阪市内の住宅街の細い路地。度を超えつつあるガーデニングの緑。並ばずにお店に入れた。チキンとダルのあいがけを注文。さらっとしていて辛い。ジャガイモの副菜がおいしい。カレーオタク気味の人間とだと黙食してもまあまあ場がもつことがわかった。トロピカルティーも頼む。底にパイナップルジャムが沈んでいて、紅茶、バタフライピーのお茶の順に三層になっている。豆やスパイスもたくさん並んでいるので物色。事前に「豆買って帰ろうかな」とMにメールしつつ何も調べずに来て売り場でキャプションを読んで選ぼうとしているわたしを見て、「なんか、けっこうフワッとした気持ちで買おうとしてることが今わかったよ」と若干引いているM。「うん。野菜とか買ってから調べたりする」と返すが、意外にここではあまり時間を割く気がなさそうな感じなのでさっさと選ばないと。こんなに種類があるとは。圧倒されたが、比較的手ごろなものは陳列の仕方でわかる。いざとなれば炊飯器になんとかしてもらえばよい。イエロームングダルを買った。安かったんじゃないかと思うが、500gあったのでこの後ずっと重い。

店を出て、松屋町室内楽のコンサート会場へ。路地を抜けて、駅前を見下ろす陸橋のようなところへ出たときMが「こんなに高いところに出るの!?」と驚く。自分が土地の高低に関しても何の目測も立てずに歩いていることがわかった。「大通りと並走してるのにあっちは上がっててこっちは下がってここまで来てるんだね!」と指さしながら感心するM。正直まだ何がなんだかよくわからないのだが「へぇ」と調子を合わせておく。駅前は人形屋がいっぱい。店先には花火が大量に陳列されていた。

会場着。前列に座る。「客席のどこが音響いいとか全然わかんない。よく見えるところがいいよ。見に来てるところもあるし。」とM。全く同感だ。違いがわからない人間はよく見えるところに座っておくのがいいと思う。この歳になってやっと、わからない者どうしでそういうことを言い合えるようになってきた気がする。

コンサート終わり、Mと別れて谷町九丁目へ移動。昨日NODA MAPの当日券が余裕でGETできたとの情報を見たので並んでみることに。チケット争奪戦に参加する気がないので、今までこういった、TVで活躍する人がたくさん登場するような演劇とはほぼ無縁だった。新歌舞伎座のある上本町YUFURAへ。ユニクロで靴下を買い、無印良品で飲み物とスコーンを買う。お茶できるところがなさそうなので人気のないところで立って飲み物を飲んで休憩する。「バナナ マンゴー ターメリック」はちょっと出先で飲むのには濃すぎた。これは多分一度やった失敗だ。

当日券販売開始1時間前に会場へ行ってみると、2人並んでいるだけだった。他のどのフロアより人が少なく落ち着いたのでそのまま並ぶことに。わたしの後に来た年配の女性がその場にいた人に「並んだら入れるのか」「どういった席が買えるのか」と尋ねてきた。当日券はチャレンジするもの、という前提を知らない人までふらふらとやってくる事態になっている。答えづらそうにしながらも、わたしの前にいた女性が昨日開場後に補助席を買えたことを教えてくれる。昼の公演は予約したチケットで観て、夜の公演の当日券販売列にまた並んでいるという。やがて販売時刻になり、「3階席とS席があります。S席でよろしいですか?」「お席は〇列〇番、こちら大変見やすいお席となっております。いかがでしょうか?」にハイ、ハイ、と答えてS席を買う。入れたらどこでもいいと思っていたのでたじろいだが、記念のような気持ち。買って振り返ると10人くらいしか並んでいなかった。巡演する劇団は東京以外の公演日をガクッと減らすが、これ以上望めないなと思った。

開演まで1時間弱あったので、来しなに見かけていたベトナム居酒屋へ行ってみることに。6階の新歌舞伎座から地上に降り立ち、さらに上本町ハイハイタウンの地下へ。まだ17時台だが、同じフロアの居酒屋にはできあがっている客多数。エスニック料理屋の常として、周りよりちょっと空いている。元ハンバーグ屋かステーキ屋のような内装で、天井からはベトナム国旗とちょうちんが吊られ、いたるところにトイレのタンクに置くような造花が飾られていた。バインミーと生中(モルツ)のセットを頼む。ほかにおいしそうな定食メニューや炒め物があり目移りしたが、写真よりさらにおいしそうなバインミーが運ばれてくる。こぼれそうな野菜、しっかり塗られたレバーパテ。会計のときにショップカードをもらう。

また新歌舞伎座に戻って観劇。開演前にパンフレットも買った。

NODA・MAP 第24回公演 「フェイクスピア」

高橋一生が顔面で繊細な芝居をしていた。こんな大箱なのに!オペラグラスを使う人はああいうのを見ているんだろうな。あと、前田敦子の声の張りが印象に残った。

帰宅、風呂。


7/18(日)
8時起床。コーヒーをいれて、チーズとオリーブのトーストを食べた。ひんやりとした風が吹いている。家を出て、電車の中で伊藤亜紗「どもる体」を読む。

どもる体 (シリーズ ケアをひらく)

とても面白い。冒頭の階段を駆け下りる比喩が全編にわたって当事者の感覚を想像するのに役立つ。最近、ぴったりくる言葉を探して数十秒黙ることがあり、これはなんなのか、やめたほうがいいのかと考えているところだった。ここに書かれている「黙発」ではなさそうだが、心のうちで起こっていることに少し共通点がある。

10時、伊丹着。線路と真逆の方向に向けられたベンチに座って時間調整。11時、開演。

次世代応援企画 break a leg
劇団不労社 第八回公演「畜生たちの楽園」

小劇場が好きだなと再確認するような公演だった。笑っていいのか迷いながら笑い、共犯関係を築くような。ただ、コミューンや宗教やそこにいる人達のことがイジりっ放しになっているのではという批評ツイートを見て少し考え込む。コメディとチラシやパンフに書いてあるから、という理由で迷いを手放してしまってよかったのかどうか。14日に小山田圭吾がオリンピック開会式の楽曲を担当することが発表されてからというもの、連日90年代の鬼畜系ブームについて言及されている。ツイートでもそのことに触れられていた。

終演後、作演の西田悠哉と岩崎正裕(劇団太陽族)のアフタートーク太陽族の女優が新興宗教に入信、岡山の山奥のコミューンへ行った話。そこで見たつかみ合いの喧嘩。大学生のときに友人が家に泊まりにきた際、ティッシュに包まれた友人の義眼を間違えて捨ててしまい、道路にゴミ袋の中身をぶちまけて探した思い出。観劇ってこういう答え合わせみたいなところがあると思う。

ロビーに置いてあったクラシック情報誌「ぶらあぼ」を持ち帰る。7月号も8月号もコロナ禍以前の号と比べると半分ほどの厚みしかない。アイホールの出口には消毒液を持った人がいて、帰っていくお客にも手指消毒を促していた。駅まで走る。雨に追いつかれないように。間一髪で小雨のうちに改札に駆け込めた。

帰宅、風呂。コーヒーにバニラバーをさしたもの、無印のレモンとポピーシードのスコーンをおやつに食べる。「無印 不揃いじゃない」で検索しようとすると同じ疑問を持った人がたくさんいることがわかる。検査基準を下げた結果不揃いのものが混じっているということであって、必ずしも「揃い」の商品がつくられている訳ではない。

夕飯はラッポッキ。プチトマト、うす揚げ、チーズ、ほうれん草、もみのりを足した。勝手なことをしてもおいしい。餅が白いのはインスタントだからなんだろうか。ハングルでトッポギをツイート検索するとオレンジ色のたれがしっかりからまった画像が出てくる。

食後、劇団不労社の「忘れちまった生き物が、」の公演動画が限定公開されているのを見る。セリフにヒヤッとする固有名詞が出てくるのはここでも同じ。「畜生たちの楽園」で短期間に目を2コ抉られた貫太役の俳優が、農薬をかけられたり蛇の毒を盛られたりして画面の隅で静かに痙攣していた。ホラーだなと思う。セリフ同時多発のカオス演出で注目している人が少ない場面。この演出は平田オリザの影響で、身体能力の高い人が出てくるのは松尾スズキの影響だとアフタートークで話されていた。殺陣ではなく、ストリートファイトのような場面で身体能力に圧倒されたのは初めてかも。

夜中、野中モモの「ZINE」小さなわたしのメディアを作る を読む。

野中モモの「ZINE」 小さなわたしのメディアを作る (シリーズ・日常術)

フリーペーパーとの違いがようやくわかってきた。海外のZINEカルチャーの流れ、リソグラフスタジオという場、切り貼りして原稿をつくり、縫ったり留めたりして製本するような、手を動かして作り出す楽しみ。


7/19(月)
7時半起床。昨日のトッポギでお腹をこわし気味。飲まず食わずで出勤。猛烈な日差し。駅では急病人が車いすで運ばれていた。スーツ姿の若い女性で、意識はあるがマスクがとてもつらそう。

通勤電車の中で郡司ペギオ幸夫「天然知能」を読む。

天然知能 (講談社選書メチエ)

数日手に取らなかったらすぐにまた読む前に戻ってしまうが、読んでいる間はわかった気になる。わかるようなわからないような、あわいにずっといる。

職場にて、弁当のおかずはムングダルご飯、れんこんとピーマンと手羽中のオイスターソース煮、ゆで卵。適当に味付けしたがれんこんの穴につまった煮凝りがおいしい。
午後、職場の窓から見える空がいよいよカレンダーのように鮮やかになってくる。空はどこまでも青く、雲はどこまでも白く。

やがて退勤。店内ポストに投函しようとコンビニへ入ると、ワクチン接種した人もマスク着用で入店するようにと貼り紙がしてあった。帰宅、風呂。洗濯もした。夕飯はスパゲティナポリタン。暑さに体力を奪われたのか、洗濯、夕飯、弁当作りがひといきに済ませられない。ラジオ番組から察するに21時ごろ寝落ちして3時ごろに起きた。そこから夕食の後片付け、歯磨き、弁当作りをする。


7/20(火)
8時起床。今朝もお腹をこわし気味。食欲がない。ゲリラ豪雨にそなえて洗濯物を取り込む。

通勤電車の中で「十七音の旅」を読む。

十七音の旅 余市、北海道、日本

俳句を味わうのは結構難しいが、エッセイつきだと長く楽しめる。

職場にて、弁当は昨日と同じ。ゆで卵OUTかぶIN。昼休み、メールでホームパーティに誘われる。なんて甘美な響き!先約があって行けないのであまり根掘り葉掘り聞くこともできないが、トランプでもするんだろうか。このメンバーならトランプでもなんでもいいし、遊び方を模索するのはいいことだと考えたりする。

やがて退勤。帰宅、風呂。おやつにトマトとブラッドオレンジのゼリーを食べて、炊飯している間にちょっと楽器を弾く。夕飯は白飯、卵どうふ、ゆでたほうれん草、こんにゃくステーキ。白ごはん.comのレシピ。サラダ油とごま油で焼いて、にんにくバター醤油のソースを絡める。なすがごま油を吸い切ってソースの絡む余地がなく、なすだけ違う味付けになった。

食後、彼氏と待ち合わせの相談。「何両目か決めといて同じ電車に乗ってから落ち合えばいい」「おばちゃん同士がたまにやってて出合頭にキャッキャしてるやつ」と提案するが「ノットおばちゃんで」と返ってくる。「不安やったらホームで待ち合わせすればいい、おばちゃんらも不安の反動でキャッキャしてる訳やから」。自分で打ったメッセージだが、あれは不安の反動だったのか。