「ヨーロピアンシュガーコーンのパチモン食べる?」「うん」冷凍庫からヨーロピアンシュガーコーンジャナイを取り出すと金色の「センタン」のロゴがあしらわれた透明の袋がぱんぱんに膨らんでいる。開けたあとに「写真をとればよかったな」と思うほどだった。家の中の気圧が、こんなに下がっている!他にないかキャビネットを漁るとココナッツビスケットの個包装にわずかに空気が入っていた。「ちょっと膨らんでる!買った時はこうじゃなかった。それは知らんやろけど」と自己解決したあとで彼氏に手渡す。
私は今晩一緒に過ごせるんじゃないかと思っているけど、「兄貴が帰ってくるらしい」ポツリと漏らされたことで、今晩泊まらないんだなとわかる。関東にいるお兄さんが実家に帰ってきたタイミングで会っておきたいのだ。「なんか食べに行く?」「まだ早いし、歩いて行ったらちょうどいい時間になるやろ」散歩の魅力は計り知れない。連れ出されると自分でも不思議なほど満たされる。地図が読めず、何度通っても方向感覚が育たないためひとりではそうならない。それがわかっていて、散歩で折り合いをつけてくれることが多い。何もな…くはないが国道がのびて住宅街が広がっているだけの自宅のまわりにいくつも散歩コースがある。「それでそのまま帰ろかな」。
薄暗い中2人で家を出て、マンションの前で早速立ち止まる。「どっち行く?」と彼氏。「こっちがステーキガストとかココスで…」とドブ川沿いに南下するコースの記憶を辿っていると、「ココスあったなあ。ステーキガストは2時間くらいかかるで」と止めてくれた。「お寿司とか?」と彼氏。線路に沿って東へ歩いて国道へ出ることに。この国道の先はくら寿司へつながっている。「王将に入ってもいいし、天下一品も来来亭もある」「さともあるしやよい軒もある」道中、目に入る看板から何の判断もせず店の名前をどんどん言っていく。くら寿司は混雑していたが、待ち時間にバッタらしいバッタを写真にとれたのと、スシローとは違って寿司がレーンにのって回ってくることが嬉しかった。
和泉悠「悪口ってなんだろう」を読み終える。悪口を言うのが好きすぎて手に取った一冊。悪口によって言われた人のランク付けをしたり、操作したりできるという。権力を持つ者を諌める効果があるという一章があり、たぶんやめられないと思う。文中で例を5個くらい出して、そのうちのひとつを突拍子もなく、作家の色が強烈に出してあるのが楽しい。真似したくなる。