職場のビルの隣のカレー屋の店長と出勤時刻が同じくらい。私がビルの前に着くころ、店長は「カレー」などと書かれたのぼりを店の前に立てている。日によってはのぼりが立っておらず、店の中に人気がないのでほぼ同時に出勤していることがわかるのだ。店長はボリウッド映画俳優のように精悍な顔立ち。朝はトレーナー姿だが営業時間になると三つ揃いのスーツ(ジャケットなし)姿。流暢な日本語で接客される。「お客様お帰りでーす!」など完全にネイティブ日本語発音なのだ。私はここで毎回、ナンを頼むお客に囲まれてダルバートを食べている。ナンのセットより手間がかかりそう、原価率も高そうでいつなくなるかわからないありがたいダルバート。もちろん味もよい。シャバシャバのダル、くたくたの副菜、骨付き肉のカレー。プレートの中を一周回って今は黄色いヨーグルトソース(チュカウニ)や薄い小皿に盛られた松の実とトマトのソースが恋しくなってお店へ向かっている。今朝はとても気分がよく「店長おはようございます、また明後日くらいに行きますね!」と念を送った。
つい先日、名刺代わりにZINEを渡した方にお声がけいただいて勉強会へ行くことになった。月曜に問い合わせをし、火曜に「実は木曜に私が発表をするのですが…」とご案内いただいた。今日、木曜に早退できるように時間休を申請する。絶対に行く。今の私には学問と、学びの場が必要だ。
これから何度も早退することになるんだろうか。環境を変える必要も出てくるかもしれない。まだ見てもいないのに浮足立った想像が広がる。それに蓋をするように頭の中で母親の声が響く。新しいことを始めようとする度に言われてきたこと。自分で決めて黙ってやることにしているにも関わらず、言われたことはないがいかにも言いそうなことや、絶対に言われたくないことまで勝手に生成される。もう新しい素材が入ってきませんように。何か他愛もないことで笑い合って上書きできないだろうか。そう願って帰省する度にある部分は癒やされ、ある部分はまた傷ついてガタガタになる。「そんなお金かかんの?!高すぎるやろ」「それで、いくら貰えんの?」「大丈夫なん?」「会社の人はなんて言ってんの?」「彼氏はなんて?」「友達でそういう事してる人他にもおんの?」「心配してるんやん」「ちょっとぉ、お父さぁん」