20241212-1215

11月後半より平日に勉強会に参加するようになってから、映画や展覧会の情報に追われる感覚が薄れている。週の前半は映画、後半は演劇、土日は美術館。随所にコンサートやトークショー。そのくせ当日の朝まで予定は未定で、どこに行って何をするか決めきれず焦りばかりがつのり、結局一日中横になっている休日も。それが、朝のうちに今日は家で過ごそうと決められるようになった。学びに対する飢餓感からイベント情報を追い、追いかけられていたのだろう。まだ自分では何も成し遂げていないのに落ち着きが生まれているのもおかしな話だが、楽になったのは確か。

 

金曜日、職場の忘年会。今年入社した女性社員がいるので参加を決めた。パトロール気分。うまく振る舞える気はしないけど、ぜんぶ見てるからな。との旨をツイートするといいねがたくさんついた。殊勝なツイートをしていいねで応援されてはいるが、私は飲酒するとはしゃぎ散らかしてしまうので初志貫徹するにはノンアルでいくべきだろう。でも飲むと思う。その葛藤をたまたまやりとりしていたオケの男性にも書き送る。この人は幾度となく飲み会で一緒になっているので。「そんな先輩がいるのも素敵ですが、ぜひはしゃいでいただきたい気もしますね!」と気の利いた返信があった。忘年会はというとくじ引きなのに考えうる限り最も平和な席順になり、ちいかわのようなおじさん社員がニコニコしながらパクパク食べているところを件の女性社員と笑いながら見ていた。生ビールと角ハイボールとレッドアイを飲んだ。帰り際に座敷から降りて靴を履いていると「も〜!M君に変なこと教えないで下さいよ〜」というオッサンの声が聞こえてきてM君が先輩社員に風俗を奢られたことがわかった。そういえば先週、珍しく連れ立って出張していた。その時私が想像したのは社用車に相乗りする2人の姿だったが、ろくでもない展開だ。物静かなM君が風俗!しかし自分で予約して利用したのならショックは受けなかっただろう。女性の身体を共有することで深められる親睦。後日吹聴することにより、その場にいる男性どうしの結びつきも強化される。

 

忘年会終了後、彼氏と合流して散歩。イルミネーションに沿って梅田から御堂筋を下った。毎年恒例になりつつある。心斎橋に近づくにつれてどこからか大型バイクが現れ、エンジン音で会話がしづらくなる。ハイブランドのショップのショーウィンドウを数多く目にする、私にとっては滅多とない機会でもあったので、「まなざしの装置」を読み終えておけばよかった。ルイヴィトンはマネキンを置かず、ヒョウやカタツムリなどからなるメリーゴーランドが駆け巡っていて好きだった。

 

土曜の晩にYouTubeでガクヅケの木田さんが「後輩君」についてホワイトボードの前で話す動画を見ながらスニーカーの穴を繕った。先週、穴を繕って中敷きを入れたのとは別のスニーカーの左親指部分に穴があいていたのだ。木田さんは奈良県の高校に通っていて、バイト先のスーパーの「後輩君」に恋愛感情を抱いていたのだという。近商スーパーかな。近商指定のキティちゃんのバンダナで髪を覆って青いエプロンをして、後輩君に会いたいあまり控室に居座りパートのおばさんに嫌われて関西弁でバトルしている木田さんを思い浮かべた。やがてある女性に「一瞬で追い抜かれて」後輩君の恋人の座につかれてしまう。友人として毎日のようにつるんで、旅行もしたのに。そして傷心の木田さんは東京へ。

 

日曜の朝、ひじき煮とおでんをつくる。ひじき煮はまだ2回目。先月ふと、好きなだけ食べたいと思いたち自作したらおいしかった。砂糖が入っていないのがいい。おでんは198円のパックを買ってウインナーや練り物を足すのが常だったが、今年は同じパックが298円くらいする。100円の差で買う気がなくなり、今年はイチからつくっている。つゆの味付けに迷ってパックを買っていたところもあるが、塩昆布と生姜で味付けするのが気に入ったので定着しそう。

 

日曜の昼、元クランアイリーン現ザンボアの澁谷さんがツイートで言及していた配信ラジオ「のらじお」の「友だちの難しさについて」回を流す。「文学や映画、アニメなどで、仕事の「相棒」やスポーツなど同じ目標を共有する「仲間」ではない形で男性同士の精神的交流や友情が描かれている作品」の少なさ。例えば寄生獣名探偵コナン。ともに主人公新一を気にかけてくれるのは女性のクラスメイトだけ。様子がおかしかろうが、失踪しようが。という指摘に頷く。なんとなく木田さんのエピソードとのつながりを感じてまた昨日のスニーカーを手にとる。もう穴はふさがっているが、違う色の糸で繕った。

 

日曜の夕方、ドラッグストアへ行って数年ぶりにシャントリをセットで購入した。吉田朱里さんことアカリンがYouTubeで紹介していたシャンプーとトリートメント。サロンシャンプーを愛用するアカリンが唯一認めるドラッグストアのシャントリ。ダメージケアにこだわるならシャンプーだとはアカリン行きつけのサロンの美容師の弁。メーカーさんも原価めっちゃ高いです〜アセアセって感じがZOOM越しにも伝わってきましたとの事。完全に企業案件動画なのに気になって買ってしまった。数年前は湯シャンとクエン酸の時代もあり、ノーシャンZINEも発行していた私だが時は流れ白髪染めを兼ねてカラーリングをするようになり、しっかりトリートメントをせよと美容師に指導されているのだ。香りが許せて少量パックの無印良品のトリートメントでお茶を濁しているが、行く度に指導されてしまう。それには気のない「は〜い」という返事をしてちょっと笑われている。キリがないじゃないですか?でもやっぱりツルッツルにしてみたい気もする。

 

日曜夜、カーペンターズクリスマスアルバムを聴きながら読書。

 

□玉川祐子「「ピアノを弾く少女」の誕生 ジェンダーと近代日本の音楽文化史」

「ピアノを弾く少女」の誕生: ジェンダーと近代日本の音楽文化史

「国家の最小単位としての家庭の安寧秩序維持の役割が期待された女性にとって、家庭の団欒を演出できる音楽の素養が望ましい。」

 

ドイツで、日本で。国境と世紀を越え幾度となく変奏され続けるテーマがこれ。持ち出せるヴァイオリンではなく据え置きのピアノを。女性の教育にはしかるべき程度というものがある。音楽は女子供のすることだが、西洋に追いつくためには国として力を入れて男性の演奏家も養成する必要があるが、その際女が教壇に立つことは許さない。

 

□平岡祐子「まなざしの装置 ファッションと近代アメリカ」

まなざしの装置 ―ファッションと近代アメリカ―

「国家の最小単位としての家庭の安寧秩序維持の役割が期待された女性」は「「ピアノを弾く少女」の誕生」の一文であるが、そのままこの本のメモにも使えそう。家庭の安寧秩序のために

「飾る女性」

家を飾り、自分が着飾り

「縫う女性」

仕立て、あるいは刺繍する。

 

そして現代に近づくにつれ

「模(かたど)る女性」

型紙の示す流行を追って消費者となり

「巡る女性」

ショーウィンドウの中に現れ、通りからショーウィンドウを見つめることとなる。