機会を逃さず実績をつくる

楽器を背負ってパン屋に入るという実績をつくった。何年か前に知り合いが楽器を背負って店から出てくるのを見て、自分には到底無理だと思った。左手にトレー、右手にトング。背中に楽器、お腹にリュック。入店してからお腹が減っていないような気がしてくるかもしれないし、食べたいパンがなくて焦ってしまうかもしれない。しかしガラス張りの店内は外から見るより数段広かった。ベビーカーや車椅子の利用客を想定した設計、導線なのかもしれない。8時台で他にお客がひとりしかいないのもよかった。豆パンとたらこマヨパン(小さな丸い餅がいくつかのっている!)、櫛のような形のパン生地のウインナーパンを買った。

同じ日に、楽器を背負ったままギャラリーで絵を見るという実績もできた。百貨店のギャラリーで絶妙にバックヤードや物陰が見当たらず、ちょっと置かせていただけませんかと言い出せなかった。肩へかかる楽器の重みから制限時間を探りながらじっと見る。楽器が会話の糸口になり、作家から作品にまつわるエピソードを聞くことができた。「顔から描いていって、笛のとこで指どうしようと思ったんですよね、でもわかるやろと思って。」ランドセルを背負った桜文鳥がリコーダーを吹いている。わかるやろと思って省いたのは指ではなく羽根だったのが面白かった。紺色の二の腕、五本の指。顔の横に音符が描き込まれている。何でも演奏できそうだ。肩が限界に達したから立ち去ったが、ポストカードくらい買えばよかった。

この間Mと火鍋屋に行った際、もうお腹いっぱいだったがデザートを頼もうと注文用タブレットをのぞき込んだ。ココナッツアイスを頼もうとすると「遅延」アイコンがついていて注文カートに入れられない。品切れってことじゃない?と早々に諦めモードに入ってしまった私。Mが店員を呼び止めて尋ねると、ササッと操作してくれて注文できた。「後でもってくるって意味合いで遅延アイコンがデフォルトでついてて、それを外したら注文できるみたいだね」と画面を見ていなかった私に説明。今思えば「遅延」が品切れの訳がない。私はこうしていくつもの機会を損失してきたんだろう。運ばれてきたココナッツアイスを半分くり抜いて自分のお皿にとり、殻ごと渡してくれるM。とてもおいしかった。ココナッツアイスを出している店を探してみようと思うくらいに。

 

今週のお題「最近、初めて〇〇しました」