20240612

朝から病院。受付で保険証を出すと、「マイナンバーカードがあれば機械に通してください」と言われる。マイナンバーカードは持参していないが機械に目をやると、「次回よりマイナンバーカードをご持参ください」とある。

別の患者とのやりとりより

マイナンバーカードだけ持ってくればいいのか?

→この機械が故障するとその日は診察できなくなる。両方あったほうがいい。

・これはいつまでの対応なのか?

→未定

機械(リーダー)の調子が悪そうなのは前に来たときに目にしていた。現場はずっと対応に追われている。

私の前に診察室へ入っていった年配の女性がよく喋る。「クガツ25日から海外旅行に行ってまして…その時に嘔吐したんです」「9月?今年ですか?」「5月です。そんでシビルア(←セルビアかシベリアか聞き取れない)へ行く飛行機に乗りまして、飛びたつ直前に嘔吐しまして、一番うしろの席にしてもらってすぐにトイレにいけるようにしまして、その後はなんともなかったんですけど着いてご飯」「何が言いたいんですか?」「そういうことがありました、という話です」長話をキツめに制止されたのにまったく意に介していなかった。

 

和歌山へ。電車の中ではUNIさんの日記本「たたかうひっこし」を読んでいた。この期間に日記を書いていたこと、そして本にして発行したことがUNIさんを現在地まで運んできたのだと思った。肉体的にも、精神的にも。挿絵が本文の間に挟まっているのがかわいい。その中に鼻をほじっている女の子がいるのも、すまし顔なのもいい。イラスト担当は別にいて、作品どうしで交信されているのもアツい。生まれてからずっと関西で引っ越しも一度しかしたことがない私が身につまされたのは、ハムちゃんが自分の職場のみんなとUNIさんで鍋がしたいと言う場面。会社って社員を囲おうとしてくるし、私の彼氏もすすんで囲われているように見える。

和歌山県立近代美術館「土が開いた現代 革新するやきもの」

林康夫の作品の静けさを気に入る。それでいて複雑な形で、見る角度によって印象が変わる。前かがみになって台座の周りをくるくる回って鑑賞した。錯視をさそうような線の引き方、着色のグラデーションも見事。陶器のデザインとして切れ込みが入っていると妙に惹かれる。白地にピンクの林秀行作品もかわいかった。順路の最後のほうは田中恒子コレクションから寄贈された作品が連なっていた。このおかげで展覧会のジェンダーバランスがとれつつあるのではないか。

美術館を出て和歌山城公園内の動物園へ。日差しに焼かれる覚悟を決めて歩きだしたが、公園に入ってしまうと遊歩道のほとんどが木陰になっていた。街中にあったら目をみはるような巨木がいくつもある。そして信じがたいことにセミが鳴いていた。自転車の傍らにいたおじいさんに、「セミが鳴いていませんか?」と聞きたいくらいだった。動物園には

キャップをかぶったおじいさんが何人かいて、コンビニのポリ袋に持ち物を入れているおじさんがいて、私がいた。みんなひとり。時折家族連れがやってきては出ていった。ペンギンこそ右へ左へ泳いでいたが、ウサギもヤギもカピバラもアヒルも目を瞑って寝そべっていた。エミューはこちらをじっと見据えてきた。何もしていない動物を見ていると自分の中の時間の流れ方が変わってゆったりした気分になった。久々に動物園に来たから日常との落差が大きい。ペットのいる人は日常的にこの感覚を味わっているのかもしれない。