20240609

一日中恥ずかしかった。そういう月曜日が年に何度かある。日曜日がアマオケの練習日で、練習後の飲み会で様子がおかしくなってしまうのだ。誰かに指摘された訳ではないが、様子がおかしかっただろうなと思って恥ずかしいのだ。もう月曜日なので、恥ずかしがってみせる相手もいない。

 

年に一度のアンサンブル発表会だった。いつもの練習場で、お客を入れないで、弦楽四重奏木管五重奏や、ホルン四重奏などフルオーケストラより小さい編成の曲を演奏する。普段は練習場の隅、ホワイトボードの隣で家具のようにただ存在しているアップライトピアノ。この日ばかりは部屋の鍵と一緒にピアノの鍵を借りてきて蓋を開け、演奏する人がいる。埃っぽいカバーも外して10人がかりでステージ(段差はないのだが)上へ運び入れる。独奏の伴奏、ピアノクインテット、ピアノトリオ。ひとりで何曲もピアノパートを担当するIさんが隙間時間を見つけてはピアノ椅子に腰掛けて、あるいは立ったまま難所のおさらいをしている。普段とは違う楽器を操るIさんにKさんが「ピアノお上手なんですね」と声をかけると、「練習したぁ…」。この一瞬を日記に書こうとその場にいた時に思った。素人目にも日曜音楽家にはヘビーな曲目ばかり。Iさんが職場から自宅に帰ってきて、毎夜ピアノに向かっている姿を思い浮かべた。何年か前はご家族が譜めくりをしていたものだが、タブレットで楽譜を表示させると足元のページターナー譜めくりをすることができる。これで今回ご家族との共演がかなった。

 

小雨が降る中、演奏というより鑑賞で疲れた身体に楽器を背負って練習場をあとにする。5時間の長丁場だった。打ち上げ会場は近所のイタリア料理屋。「お店どこでしたっけ?使ったことありましたっけ?」に対し、道中歩きながら振り向いて「生ハムが出てくるところやから!」と返すと「覚え方がザルすぎる。全く記憶にないです」と笑われる。10個くらい年下の人にスパーンと突っ込まれると嬉しくなって「あんなに山盛りになってたのに!皆大喜びしてたのに!」とかぶせる。会費を4000円しか払っていないのに、飲み放題つきでこの料理!と感激したのだ。数日前まで楽器の置き場所がないから練習場に部屋を借りようかと話していたのに、いつの間にかワンフロア貸し切って楽器を置かせてもらえることになっている。会費も据え置きだし、どう交渉したのかわからない。幹事に感謝。

 

冷めたリゾット(不思議なことにまだまだおいしい)を箸で口に運んでいるとMがやってきて「今日よかったよ。しっかりした音がしたし、全然違うよ。違う人みたいだよ。」と声をかけてくれる。胸にこみ上げてくるものがあり、「え〜、泣きそう」などと言ってしまう。これが本当に恥ずかしい。この場合の私の中の理想の返しは「練習したぁ…」なのだ。本当に嬉しかったので、喜んでみせられたことはよかったかもしれない。しかしこの年齢でこの顛末は非常に後ろめたい。〇〇さんに褒められたとか、〇〇さんが誰それのことを上手いって言ってたとか。他人の評価を気にすることからは学生オケのうちに卒業したつもりだった。無闇に他人をジャッジしない。不躾なジャッジをするジジイからは逃げる。そうすると自分で自分の演奏を評価することができない。自分の演奏を聞く耳がついていない。そのため他人のコメントにいちいち激してしまう。しっかりしていない音を出していた時のことが思い出せない。