0223-0301

2/23(木・祝)

朝から出てきて着いたらもうお腹が減っている、私にとっての和歌山あるある。家を出る前に食べたピザトーストはどこへ行ったのか。電車の中では平野睦子『人と作品 岡本かの子』を読んでいた。

冒頭から作家がかの子の容姿をボロクソにけなすので不安がよぎったが、ある程度突き放した距離で語られるのがよかった。JRの駅を出て小雨が降る中ピアノの調べとともに少し歩く。見回すとアーケードの各所にスピーカーがついていた。「パイン」という喫茶店に入って、中華一番のコンビニコミックが並ぶ窓際のカウンター席につく。薄手のカーテンには毛玉がついていて、よく洗濯されているのかもしれない。窓の外には洋風の鉄の扉がついていて、植物のデザインがかわいい。モーニングを頼むとカリカリの白身魚フライがついてくる。この店はランチのチキン南蛮が有名。広くて使いやすそうなキッチンのどこかからトントンと包丁の音が聞こえてくる。キャベツの千切りをしているのだと思う。店を出て和歌山県立近代美術館まで歩いた。今日は暖かいので歩ける。昭和のビルがちらほらあって飽きない。

「とびたつとき 池田満寿夫とデモクラートの作家」。

展示室の入口では仲間や先輩と同じような作風で制作していた池田満寿夫が、出口で大飛躍。広島市現代美術館所蔵のものが多い。反復のリズム、手の表現が好み。女体の扱い方について論じられたものがあれば読んでみたい。泉茂の鳥の作品「七面鳥」「対決」。馬を描いた「難民」。これは和歌山近美蔵なのでまた見られるかも。あい嘔「サド伯爵」は個人蔵。瑛九の「旅人」に描かれている風船のようなものは国立国際美術館のコレクション展でよく見るものか。楽器がモチーフの作品も多くある。吉原英雄「トランペット」。どう見てもホルン。「サキソフォン」。これもホルンなので確信犯かもしれない。

「新収蔵 奈良原一高の写真」。

同じ大きさの写真作品が展示室の壁にぐるりとかけられている。顔がうつっているものは少ないが、取り囲まれたようで息がつまる。石内都が魅せられたという白黒写真の「粒子」がどんなものかわかった。

「コレクション展2023春」。

マンズー、ジャコモ「ジュリア像」。魔女の宅急便のキキのような髪型で頭に華奢なリボンをつけている少女の胸像。枕に肘をついて真顔で視線を落としている。スマートフォンでも持たせれば現代的なくつろぎの時間が生まれそう。着衣と枕から日展で特選をとって話題になった酒井華「ルームウェア」を連想した。木村賢太郎「話」、福岡道雄「石をおとす2」。またここに来れば見られるかもしれないのが嬉しい。山崎亨「帰宅の器」。ただいまーと玄関ドアを開けて入ってきたその足ではまりにいける器。コンセプトも奇抜な色遣いも気になる。木村秀樹「H君の水鳥」。山本容子「A Birth」「Cook Joathan」。繊細さとドライさが共存していてかっこいい。好物の反復表現。「Dancing Drinker」は金子光晴寄贈!

カレーショップバラへ向かう途中、満開の梅の木を見つけた。美術館の駐車場の脇にロータリークラブが植樹したもの。ロータリークラブの活動に感謝。バラに行くと毎回店員同士が和やかに話している。談話とはこういうものなのではないか。レディースカレーには肉の揚げ物の代わりになすびの素揚げがのっている。その後は和歌山城公園内の動物園に行った。鳥インフルエンザの影響で水鳥は見られず、工事中でペンギンは遠目でしか見られなかった。クジャクはよく見られた。ここのクジャク舎の見やすさは随一。通路から見下ろせるのがよい。アルビノクジャクを見た人が「紅白に出てくる人みたい」と言うのが聞こえた。紅白の衣装がクジャクモチーフ。本屋プラグに寄って和歌山城周遊は終わり。

スーパーに寄るが何も買わずに出た。買い物カートを押した女性が山積みにされた長ネギの前を通り過ぎ、後ろ歩きしてまたネギの前に戻り「下仁田ネギが欲しい」「下仁田ネギが欲しいねん」と連れの女性(この女性も買い物カートを押している)して手に取っていたが、積まれていたのは別のネギ(私は違いを知らない)だったので戻していた。嘆きの連呼。帰宅、風呂。夕飯は豚汁の残りにギョーザを入れたもの、ご飯。 食後、日記ブログをアップする。

2/24(金)

朝カフェラテ、カニカマトースト。昼ダルバート。夜さば塩ラーメン。通勤電車の中では矢川澄子『「父の娘」たち』を読んでいた。

「父の娘」たち (平凡社ライブラリー)

矢川澄子森茉莉は直接交流があったこともあり、文章に親しみがこもっている。エッセイ、対談、講演会など多様な仕事がまとめられている。続けて読むと森茉莉変奏曲のようで楽しい。

やがて退勤。慶応大学のオーケストラの大阪公演に足を運んだ。 今まで見た学生オケの演奏の中で一番よかった。躍動感があり、かつ連帯している。仲間の演奏をたたえるホルン奏者の女性が足でステージを鳴らしている。たくさん鳴らそうとするので今にも走り出しそう。帰宅、風呂。洗濯物が全然乾いていない。各種動画を見て週末のアマオケの練習の準備。

2/25(土)

呻きながら起きて白湯を飲んでさつまいもを食べた。毎朝毎朝「ダウン(ジャケット)飽きた」「冬服飽きた」とつぶやいているが、朝の気温は冬のまま。ラジオではピーターバラカンが「ロシアがウクライナに侵攻して1年が経ちました」「(当初、希望を託してスティービーワンダーの曲を流したのは)ちょっと甘かったかもしれないね」と話している。家を出て、通勤電車の中では川上一石『たくましい女たち』を読んでいた。『真似のできない女たち』のあとがきで山崎まどかが強く影響を受けたというのはこの本ではなかったか。うろ覚えで借りてきてしまったが序盤はちょっとまだ疑わしい内容。男性の登場人物の台詞の三点リーダーに、少しずつ読む気が削がれていく。正午、退勤。よくダルバートを食べに行くカレー屋でターリーセットを頼んでみる。カレーはキーマ、ナンはチーズナンに変更。先日居合わせたお客の言った通り、「ナンつきチーズ」だった。思ったとおりキーマカレーとよく合う。背徳的な味わいに満足。その後思い立ってプロオケの定期演奏会へ行ってみる。昨日はアマチュアの演奏会だった訳だが、客層が嫌だった。定期的に周りのお客に不満を抱いているような気がする。客席で勝手に指揮をする人間とは視界がうるさくなるので居合わせたくない。自分より若い世代にああいう手合いがいるとは。一方で、他人の様子を気にするようなレベルから早く解脱したいとも思っている。どうすれば支払ったチケット代と時間と折り合いをつけて演奏会を楽しめるのか。今日は当日券で3階席に入ってみた。ステージの半分しか見えないが、A席の半額なのでそれはいい。自分の後ろに席がなくて気楽。真隣に人がいないのもくつろげる。周りのお客も熱心に聴いているか寝ている(昼公演だからか?)かで助かった。指揮者や打楽器奏者の手元、ソリストアンコールの際、指揮者が片手を壁について脚を「4」の字にして聴いているのがよく見えて楽しかった。終演後、少し人波がひいてから客席をあとにすると、白杖をもった人と腕をくんで先導している人が階段を降りようとしているところに出くわした。「一段降りて、螺旋で、その後○段です」。

演奏会で気分が良くなり、足を伸ばして「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」へ。音声ガイドのバックに流れている室内楽が気に入って内容に関係なくプロローグを何度も再生する。「〇〇についてもっと知りたい方は赤いボタンを押してください」。押すと、ジムノペディの調べとともに国立西洋美術館の研究者が登場する。作品の前での滞在時間が延びるのでガイドを利用することにしているが、ガイドのついていない作品を見ているあいだにも何か流しておけるようになっている。「両大戦間のピカソ―女性のイメージ」の9作品が気に入った。「緑色のマニキュアをつけたドラ・マール」。ブラウスのデザインが繊細でおしゃれ。展示室の華やかな雰囲気を戒めるような「大きな横たわる裸婦」の陰鬱さ。

帰りにドラッグストアに寄って明日出先で食べる惣菜パン、千切りキャベツ、食パン、冷凍うどん、トマトの飴、ミルネージュなど買う。お腹が空かないので夕飯は食べなかった。

2/26(日)

朝巣ごもりキャベツ、ピザトースト。昼ランチパックハムタマゴ、アーモンドケーキ、福豆。夜こんにゃく炒め、キャロットラペ、かぼちゃ、いいちこお茶割。10時から18時までアマオケの練習。ミーティングでオンラインチケットの注意事項が話されている時、「QRコードを印刷して友達に渡したけど無理なのかな?」と聞いてくる人がいて「今説明された通りにしないとお客様が入場できなくて当日のフロントスタッフに全部しわ寄せがいきます」と返したらそばで聞いていた人が肩を震わせて笑っていた。心の中にちびまる子ちゃんのクラスメートの前田さんみたいな人格があって、自分の思う秩序が乱されそうになるとあの勢いで取り乱して暴れだすことがある。今日聞いてきた人に対しては「なぜここでゴネるのか!」と不満爆発しそうになったがこの人は拗ねたりしないので助かった。「ほえ〜!無理か〜!」前田が出てきて消耗したがわかってくれたならよかった。

2/27(月)

朝フレンチトースト。昼(弁当)オムライス。夜チゲ鍋(辛ラーメンの粉の味)。通勤電車の中では長谷川逸子『生活の装置』を読んでいたが、まったく頭に入ってこない。

生活の装置―私の住宅設計 (住まい学大系 95)

文章から建築を想像するのが難しい。写真があると読み進めやすいのか、そうでもないのか。職場にて異動先での業務。尿道結石の治療法について上長と事務員が世間話。お互い一切照れたり混ぜ返したりしていなくて新鮮だった。顔をしかめて、左手で拳をつくって右手でぐっと管状のものをさし込む手付きをする上長。このような対等さが古巣にはなかったな。古巣で帰る支度をしていると1年目の男性社員の「モテモテ改造計画」について20代社員で盛り上がっていて心が冷えた。やがて退勤。帰宅、風呂。ラジオからはサンサーンスのチェロコンチェルトが流れている。その後ラジオを切ってアマオケの練習の録音を聴いた。昼休み聴いたときはなんてショッキングな音源なんだ、手のほどこしようがないと思ったが多少前向きな気持ちが生まれてきた。早速耳が麻痺したのかもしれない。この繰り返しで今まで楽器演奏をやってきた実感がある。寝る前にジャニーズゲーミングチャンネルの動画を数本見た。

2/28(火)

ピザトースト。昼(弁当のおかず)さわらの味噌焼き、小松菜、金柑。夜スシロー。通勤電車の中では松田洋子『人生カチカチ山』を読んでいた。

人生カチカチ山―女の幸せ探して三千里

金正日森喜朗法の華カフェ。90年代の復習ができる。小ネタも多い。

出勤して退勤した。残業のちスシロー。満席でちょっと待った。カウンターも仕事帰りにひとり夕食をとる人が鈴なりになっている。キッチンには大勢の店員がいる。基本的に火を使わず、持ち場が決まっているので店員というより工員のようだ。次々にお寿司が出荷される。忙しそうなのに一皿一皿きれいなつくりで、自席から注文レーンを眺める目の保養になる。隣の席の人がずーっと誰かと通話をしながら食べている。楽しそうな姿だが、何度隣り合わせても慣れない。入れ替えがあるのはわかるが、なんとなく前回よりメニューが減っている気がする。なすびがもうない。一貫ずつのセット(まぐろとサーモン、コーンとツナ)もない。軍艦ねぎまぐろ、軍艦白子ポン酢、サーモン三貫盛、軍艦いかおくら、いわしねぎしょうが。いわしが一番おいしかった。デザートに大学いもとわらびもちの盛り合わせも食べた。わらびもちは和菓子店とのコラボ。納得の味と食感。帰宅、風呂。髪をドライヤーで乾かしていると、日中聞こえよがしに嫌味を言われていたことに気づいて暗い気分になった。異動先にもう敵がいる。古巣で敵同士だったというだけの話だが。書類を机に置いてもありがとうも言わない奴は死ねと思っている。このところまた支店で欠員が出ているので、飛んでいくような気がしている。自分が飛ばされたばかりだとしっぺ返しを恐れない。失礼な奴は私の前から去れ。さやか「ゴーストミックステープ」を聴きながら日記を書く。

3/1(水)

朝、のりトースト。昼、仕出しの弁当。夜、コーヒーようかん、さつまいも、ツナうどん。通勤電車の中では暮らしの手帖別冊『わが家の家事シェア』を読んでいた。

暮しの手帖別冊 『わが家の家事シェア』

A4サイズ超の大きさ、カラーグラビア。生活がとっちらかって頭の中が騒がしい日々。雑誌には没入感があることがわかった。ケッ!しゃらくせえ!という気分と家事についての文章への興味の両方を持って読み始めて、グラビアに助けられる。自分の乗った電車が何駅を通過したかわからずキョロキョロするのが久しぶり。買い物をしなかった方が、買ってきた食品を冷蔵庫や戸棚にしまうことになっている斎藤家。ピンチハンガーの呼び方がわからず「ピロリ」と名付けて定着させている岸家。

朝家を出る前と残業中に配信ラジオ「当たりのこえ部」を聴いていると、予想外に家事について話されていた。そういえば数回前から出演者の部屋が散らかっている/家具の使い方が独特(と言われる)という話をしていて、それの続き。3点ユニットバスはトイレの床が濡れてしまうことより、風呂のシャワーでトイレが丸洗いできることに着目すべき。身近にも案外「生活の革命的なものを持っている人がいる」。残業中、異動先の部署の様子について話しかけられたのがきっかけで、3つ下の男性社員と話す。上司の悪口を言うと調子を合わせてくれる。上司がいると向こうにつくので警戒すべきだったが、気分良く喋りまくってしまった。異動に文句を言って専務にボコボコにされた者どうしだということが判明し、意気投合したのは面白かった。帰宅、風呂。日記を書く。