20240101

何かしらの整髪料をつけようと物色すると、妹の使っていた部屋にロレッタのヘアオイルとチューブに入ったワックスが置き去りになっていた。チューブから適当に出して髪につけると、スーパーハードタイプのワックスでバリッバリになった。実家からまっすぐ自宅に帰ってゴロゴロするという選択肢もあったが、これでは横になれない。母親の鏡台に三面鏡があるので後頭部を確認しようと覗きこむと、長い白髪が何本もあってショックだった。いよいよ染めないといけないのか。引っこ抜いて、ふと見ると、ちゃんと捨てる箱が鏡台に用意されている。母親も毎日ここで身支度をしているのだろう。

13時ごろ実家を出た。「お酒を飲んだから送ってあげられない」と父。「何も持って帰ってもらうものがない」と母。この瞬間は毎回やるせない気持ちになるが、滞在中に喜んでみせることがどうしてもできないし、特に予定もないのにこれ以上長居できない。

そのまま劇場に向かうことにした。昨年は、明るいうちに自宅に帰り着いて暗くなるまでが辛かった覚えがある。到着すると1回目が終わって、5人目の踊り子さんの写真撮影タイムだった。劇場いっぱいによく通る声、めちゃくちゃに明るい営業トーク。ウワーオありがとうございます!オッケーオッケーオッケー牧場!この人はパリス・ヒルトンみたいだねとお客に言われ、知らんそれ外人?でも嬉しいかも〜セレブやんな、と返していた。

2回目。浜崎あゆみのアルバムジャケットのようなヒョウ耳&ヒョウ柄レオタード。曲ももちろんあゆ。紅白が懐メロ大会だと気まずいが、ストリップの演目が懐メロだと後ろめたくない。平成の夢のような1人目のステージが終わり、2人目が始まってすぐに揺れを感じた。独立した椅子なのにこんなに他の客の座りなおしの振動が伝わるものか?と見回すと、不安そうな顔で天井を見上げたり、顔を見合わせて、地震?と言い合ったりしている。照明はカタカタと、ミラーボールはぐわんぐわんと揺れていた。ステージは何事もないように進行している。いつまでも揺れているように感じられ、何人か退席したのに便乗してロビーに出た。「めっちゃ揺れましたね」「この建物古いから危ないよ」「まだ揺れてるみたいです」とお客どうしで言い合う。この建物古いから危ないよおじさん(いち早く退席したのか、もとからロビーにいたのかひとりベンチにどっかりと座っている)が「金沢やね」と言った。私もスマホを出しては見たが、ツイッターが読み込めずすぐに閉じてまた客席へ。怖いので立ち見。

3人目の演目はモー娘メドレーだった。始まるなり白いフリフリの衣装で盆の真ん中まで飛び出してきて、踊りながら口パクで「大丈夫?」とお客を気遣う。1回目のフィナーレの時にチラッと見たのとは印象が全く違う。スポットライトの下で笑顔が輝いている。そして予想もしなかったキレッキレの動き。恋のダンスサイトの時は左の口角だけグイッと上げていて爆イケの雰囲気だった。

「何がしたい?」とか聞くけれど話せばビックリするじゃん
知らない事とか始めると超不安な顔するじゃん 

演目の最後の曲、冒頭の歌詞を聞いて涙が出た。もう30代半ばで白髪が目立ち始めているのに、10代のアイドルが歌う曲のAメロから先に展開していけない。マスクの下で泣きながら手拍子を打って、オープンショーでチップを渡した。本当に嬉しそうにオッパイで挟んで受け取ってくれる。