20240202

定時で仕事を終えて職場を出て、とりあえず風をしのぐためにスーパーに入って彼氏からの連絡を待つ。「ちょっとトラブったから7時半くらいになる」とメッセージが来て、喫茶店で待つことにする。スーパーを出た通りは飲み屋街になっていて、車が入ってこないからといって店先にコタツを置いて客席にしている居酒屋が3軒もある。お客は半纏を着せられて鍋をつついている。スーパーに入る時に座っていたのと同じグループが食事を続けており、さらにマフラーを巻いて防寒を強化していた。その隣のガラス張りのメキシコ料理屋の中ではお客がつばの広い麦わら帽子を被っている。お客を使って通行人の気をひいていて、なんだか寒々しい気持ちにさせる店ばかりが続いた。

彼氏と合流し、一軒の焼肉屋に入った。そうではないはずなのにどこも高価で混んでいるように見えてどの店に入る決心もつかず、商店街を意味なく往復。ふたりともこういう場面で腹をくくるのが苦手でしばしばこうなる。彼氏がペカペカした看板の新店の前で足を止め、恐る恐る引き戸を開けると店内の熱気が私達を包んだ。威勢の良いいらっしゃいませ。店員が裸足にスリッパなのも視覚的にホカホカする(後でよく見るとフットカバーを履いていることがわかった)。こっちの丸い(お皿の)タレは赤身のお肉、四角い(お皿の)タレはホルモンをつけてくださ〜い。ピークを過ぎたからかどの店員にも余裕があり、時おり幼児をかまっていて頼もしい。太ももをペシペシ叩いて歩いたりしていてチャラい動きもする。機嫌よく働いているのを見るのは気持ちがいいと思えた。しかも味がよかった。各種肉、各種タレ、キムチもチヂミもポッサム(どういうものか知らなかったのでGoogle検索して頼んだ)もおいしい。

 

食後、火曜の夜に対岸から眺めた中之島のイルミネーションの下を散歩。「チャッチャッ…チャチャッ…」と口ずさむ彼氏。焼肉屋で流れていた嵐の「WISH」だろうとわかった。旋律でも歌詞でもなく(街に愛の歌流れ始めたら人々は寄り添い合う)、音色やリズムを歌っているのが毎度面白い。高速道路の高架下には駐車スペースがあって、何らかの作業用のワゴン車が道路の進行方向と直角に、こちらに顔を向けて青白い蛍光灯に照らされている。ダイビルの通用門のそばには「空車」ランプをつけたタクシーが列をつくっている。イルミネーションの中に分け入ると、まだ仕事をしている人々が見えてくる。そのまま京阪電車の線路に沿うように中之島公園内を東方向に歩き続けた。肩をすくめて、耳が凍りそうなのでフードを被って、早足で歩いている間に身体が温まることを期待しつつ。前に散歩した日は同じくらいの時間でももっと人がいた。犬の散歩をする人、ベンチに座って語り合う人、芝生の上でヨガをするグループ。今夜は歩いてどこかへ向かっている人すらいない。対岸には車が走っていて、川沿いのビルの部屋のひとつひとつにはそれぞれ明かりが灯っているのが見えて、公園内の遊歩道も明るく照らされているのにこんなに音がしない。部屋の外で出さないような親密な距離感の声量で「静かやな」とつぶやいてもちゃんと「ほんまに」と返ってくる。