JR大阪駅の御堂筋改札で待ちあわせしよう、とMが決めてくれたので画像検索するとikariスーパーのある見慣れた風景が職場のモニタに広がった。ikariスーパーのあるとこやな、12時20分には着くと思う、と返信。土曜に出勤しても事務員がやることなど何もないのに受注担当と一緒に出勤させられている。たのめ〜るの分厚いカタログのページを速読のように片っ端からめくって目を通した。これは暇つぶしのようで将来自分を救ってくれるかもしれない情報収集の時間。オフィスの便利グッズの情報をせめて平成レベルにまで上書きしておかないと、いくらでも手間と時間をとられてしまう。ウェブストアを見てもいいのだが、取り扱い商品の総量を知りたかった。どういったものが出てくるか知らないと検索は使えない。派遣社員に「テープのりはないんですか?」と聞かれて初めて、テープのりで封かん作業が捗ることを知った。現状はセロテープか水のり。スティックのりすら贅沢品で、封かん作業の当事者でもある備品発注担当が水のりしか発注しない。花瓶のように巨大な、しかし形状はまったく同じ、赤い蓋のついたアラビックヤマトのあの容器が備品棚に入っていて、たらたら中身を絞り出して詰め替える。二重底になっていて、リボルバーのように円状にあいた穴に取替用のスポンジ蓋が装填されている。詰替容器の形状も相まって悪い冗談としか思えない。役員が定期券の区間内でタクシーに乗っても経費で処理するのに。毎日毎日手を替え品を替え人のことを侮辱しやがって。
やがて退勤。電車に乗って降りて改札をくぐっても向かいにはみどりの窓口しかなかった。あれ?ikariスーパーは?中央改札から出てしまった。看板を頼りに御堂筋改札へ行こうとするが、人垣で何も見えないしそれらしき方向に出てもikariスーパーはない。約束の時間を過ぎてしまう、とスマホを見ると20分ぴったりにMから着信が入っていた。「ごめんやけどikariスーパーないんよな。」と妙な切り出し方をしてしまった。こちらに来てもらおうとしていたし、そうしてくれるという。なんかでっかいモニターがあるよ、に対し「近くにエスカレーターある?」うんそれそれ。「エスカレーター4基ある?」そうそう。「エスカレータークロスしてる?」そう!「エスカレーターとエスカレーターの間にモニターが設置されてる?」いやもうすごいな景観が頭に入ってるとか。エスカレーターの下のとこにおるから。で通話は終わった。絶対にこの1回の通話で位置情報を把握するという強い意志と、ひょっとしたらこいつはとんでもない場所のモニターの下にいるのではという疑念が伝わってきた。阪急梅田駅構内の、BIGCATのモニターの可能性を潰していたのかもしれない。その後すぐにMが現れた。「ホームからどの階段を使うかでどの改札に出るかは決まるよ」。言われてみれば、帰りにikariスーパーの前の改札からホームに向かったことはあっても、行きにホームから改札を抜けてikariスーパーの前に降り立ったことはなかった。